ニコニコ通り

漫画、木版画、イラストなどなど、製作中。

2019年5月号

本っっ当、今更載せるような事ではないんですけど、4月にノビコは1周年を迎えました!ありがとうございます!!!

で、記念に描いた4コマがこちら。

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5cm × 7cmのマスに、当時のスタッフ全員の似顔絵を描くのはまあまあ至難の技でした。ここから卒業した顔もあれば、新たに来てくれた顔もある。

悲しいことに、看板犬として居たKalleちゃんも病気で帰らぬ犬に。。

本当にいろんなことが起きた1年だったけど、一番に言えるのは、楽しかったって事。

これからも変化し続ける中で、楽しい気持ちを持続できるかどうか。

そういう点では、変わらないことも大事だとつくづく思います。

 

1周年記念の1週間はみんな大好きなコロッケを販売しました。

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スタッフの一人が、バナーも作ってくれました。

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「ノビコ は1歳になります🥳ありがとう!」

 

2周年に向けて、一歩ずつ頑張ります。

これからもどうぞよろしくお願いします。

 

 

 

2019年4月号

ポーランド系スーパーで起きた、ちょっとした事件簿。

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多分格好とかも含めて子供っぽかったんでしょうね。ノーメイクだし。

中身はポーランドのビールをわざわざ買いに来るほどの、ビール好きおばさんなのに。

 

ところで16歳てのは、ドイツでは思い出深い特別な年齢のようで。

酒もワインまでは解禁されるし、クラブに行ったり夜遊びしたり、親の目が届かない時間も増え、進学か就職かで道が分かれ、大人扱いされはじめ、世界が広がっていく年齢なんだろうなぁ。

先日も友人宅のパーティーのテーマが「16歳」で格好とかどんな音楽聴いてたとかの話で盛り上がっていたそうだけど、自分の16歳思い出しても、何にも出てこなくて驚いた。一番着てた服はなんなら高校の制服やし。あ、初めてCD買ったのは16歳だったな(遅い!)。スピッツの「フェイクファー」。CDデッキ持ってないのに、どうしても欲しくて。お姉の部屋に忍び込んで、全部覚えちゃうくらい聴いた。高校に入って環境も変わって、少し大人っぽい話題も出てきて、多感な時期だったんだろうけど、自分の見てる世界は、今思えばとても狭かった。

最近盛り上がりを見せる、気候変動対策を訴える金曜日のデモも10代の若者が中心で、発端となったスウェーデンの活動家グレタ・トゥンべリさんも16歳。

それを考えると自分の16歳の時との自我格差がすごい!

 

グレタさんのことは日本でも話題になっていたようで、SNSで応援する声も誹謗中傷する声も両方見た。

彼女が12歳からヴィーガン食を始めた事について、親の責任を問う声や子供が自分でそんなこと決めるはずないって声もあったけど、私はそんなに珍しい事だと思わなかった。のび太の姪っ子も12歳頃から自分でベジタリアンになると決めたし、ノビコをたまに手伝ってくれる16歳の男の子もすでにヴィーガンで、二人とも肉魚普通に食べる家庭で育っている。十代の若者に、自分の道を自分で決める力がないと決めつけるのは如何なものか。というか、親も社会も、子供が自分で考え自分で決める力を養うサポートをすべきなんじゃないか。それでたとえ失敗しても、途中でやめても、自分で決めてやったことなら納得できるし学びもあるだろう。ただ決めるまでの過程で、話を聞いたり、一緒に考えたり、情報を提供したり、いろんな道を示すなどのサポートは必要だと思う。周りの影響で自我が形成されるのなんて当たり前で、大事なのは、感じた事を発信出来たり、実際に行動に移したりする事だ。

その結果、グレタさんのような若い活動家が生まれたなら、まず誇るべきことでしょ。

私は、彼女だけでなくご家族や環境も含め、素晴らしいと思う。

(もちろん周りから傷つけられたり、道徳的に悪い影響を受けまくった人は、逆に反発できないと、あるいは他のサポートがないと、誰かを傷つける行動に出る可能性もある。そんな不幸が不幸を呼ぶパターンはまた別の問題としてある。)

 

グレタさん自身を見本にする必要はないけど、彼女が自ら動き、発信する事が出来た社会のあり方は、見習った方がいいんじゃないのかな。

誰かを不当に傷つけるような行動でない限り、大人がケチをつけるのは、みっともないからやめた方が良い。

 

うーん、16歳以下に間違われた話から、テーマがどんどん大きくなりすぎて、頭ん中ぐるんぐるんになってきたのでもうやめます。

ではまた!

 

 

 

 

 

 

 

2019年3月号

わがままなノビコのお客様シリーズ。

 

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はい、名言出ました!

ケーキは身体ではなく心で消化されている!

 

私の場合は、がっつり身体で消費されるので、クリームとか一口でもう十分。だってあれ砂糖と油じゃん!

その代わりビールは心で消化しますよ。ただの苦い麦汁じゃんと言われても、関係ありません。心が満たされるのだから!だからお客様の気持ち、よくわかりますよ〜。

グルテンフリーよりも、心を大事にしていただきたい。

 

最近は私もノビコのケーキを作れるようになりました。でも元々お菓子作りにさっぱり興味がないので、作れるのはVeganケーキのみ!

応用も利かないし、さほどの情熱もないけど、レシピ通りに綺麗に仕上げるのは作業的に楽しいです。

目標は一番難関のVeganチーズケーキを作れるようになる事!これは、ケーキ好きじゃない私も好んで食べるくらい美味しい。難関なだけあってノビコでも作れるのは一人だけ。

私も、まだまだ修行が必要です。

 

 

 

 

 

ここらでひとつ、、、ノビコの現状

ドイツに移住してもうすぐ3年。

私の今の生活の90%はうどんBAR&カフェ「ノビコ」にあります。

誰かに雇われる事なく、ドイツで暮らしていくために選んだ道で、大変だけどやりがいもあって、全然後悔はしていません。ただここ数ヶ月、現実の壁にぶつかりまくっていて、いろんな事を考えさせられたし、お店の今後については不安も大きい。

毎日仕事ばかりで、SNSにはたまにしか投稿しないし、しても「いいね!」と言われるような事しか書いてなかったので、「充実してんだな〜」と思ったみなさん。ご安心ください。現実はそんなに甘くないって事を、ここにしっかり記しておきます。


まず、ノビコとしてのこの1年は、決して順調ではなかった事。様々な試行錯誤があったけど、今ある問題の根本は解決しておらず、今後も色んな調整をしていかなければいけない事。この問題について考えたとき、社会のシステムや飲食業界全体の問題とも無関係ではない事。そんなノビコのこの1年の経緯や失敗やこれからを、ここらで一度ちゃんと記録しておこうと思い、休暇先のイタリアのど田舎でパソコンを叩き始めました。(で、休暇から帰ってもう1ヶ月以上が経った今、やっと書き終えるという。。。)
長くなると思うし、項目ごとになるべくわかりやすく書きたいと思います!

 

 

1、赤字街道まっしぐら

一年位前、オープンして4ヶ月ほど経ったノビコの状況をブログでも報告した時は、経営的に順調だと思えた。お客さんは多いし、お店が回らないからスタッフを増やし、必要な設備を整える余裕もあった。しかし根本から間違っていた事が一つ発覚。

経営者である3人の雇用体制だ。ノビコには社長がいないので、私たちのイメージでは3人とも個人事業主として店に関わっていて、ノビコとは雇用関係を結ぶ必要はないと考えていた。だから健康保険や年金などの社会保障は個人で加入し個人で払うのだと思ったのだが、どうやら根本からそれが間違っていて、3人ともノビコと雇用関係を結んだ上で、従業員として社会保障等もカバーされていなければいけない事が発覚したのだ。まあ実際、私だけは個人事業主になるために必要な書類が色々あって面倒だった為、最初から雇用関係にあったんだけど、他の2人も同様の条件で雇用されていないといけなかった、という事なのだ。

それで何が起きたかというと、2人の社会保障にかかるお金を2018年4月まで遡り、まとめて払わなくてはいけなくなった。残念な事に2人とも健康保険は加入して支払っていたが、年金や雇用保険は払っておらず、それを2人分まとめて払うとなると、かなりの額になる。しかも発覚したのは3月頃だったので、ほぼ1年分。その時点で既にスタッフは私たち3人を入れて15名。給料払うだけでも大変なので、お店にこれを払う余裕などなかった。お金は友人や親から借りるなどしてなんとかしたが、ついに、まあまあ大きい借金ができた。

経理や雇用関係のことは、スタッフの一人が大体やってくれていて、その分野の勉強もしていたけど、経験は浅く、認識に間違いがあっても仕方ない。まあ数年後にわかるよりは良かったし、3人ともが同じ雇用関係になった方が、将来的には良いと思えた。

ただ、経理を担当していたスタッフの負荷も大きかっただろうから、もっと多くの事をプロの税理士にお任せしよう、ということになった。ともあれこれがノビコの失敗の第1波となり、経理関係を税理士に任せたことで、さらにもう一つ大きなミスが発覚した。

 


2、忘れちゃいけない消費税の恐怖

ドイツの消費税率は一般で19%、生活必需品等に適用される軽減税率は7%だ。その中でレストランでの食事は19%、テイクアウトであれば7%なので、私たちの売上のほとんどに19%の消費税がかかってしまう。仕入れにかかる消費税は返ってくるとはいえ、大きい数字なので注意しないとね、という話はお店が始まる当初からしていたし、もちろん経理スタッフがそれを計算し、毎月支払っていた。

が、しかし。上記の一件から税理士に経理を任せたところ、「お店の経営状態、全然良くないですよ〜」との報告が入り、「あれ?思ってたんと違う!」と大慌て。確認したところ、毎月経理のスタッフがあるプログラムで作成していた収支報告書に、消費税の計算が入っていなかった事が4月に判明。消費税を支払ってはいたけど、収支報告書の支出からは漏れていた、という超初歩的ミスで現実と認識のズレが生じていた。つまり、例えば1000€の黒字と収支報告書にあっても、そこから消費税分2000€が引かれれば実際は赤字、ということになる。収支報告書を信じていた私たちは、まだ余裕があると勘違いして、人もどんどん雇った。そうしてオープンから1年が経った4月には、結構な赤字を抱えてる状態になっていた、という。つまり私たちにこんなにスタッフを雇う力は元々なかったって事。なんてこったい。

まあ最初から全部がうまくいくはずなんてない。赤字はこれから頑張って取り戻せる!なんてポジティブに考えてもみたが、そう甘くはなかった。ノビコのスタッフ総勢15名にちゃんと毎月給料を支払う、ということの重み。今までちゃんと見えていなかった19%の消費税。これらがしっかり見えてきて、ずっしりと私たちにのし掛かる事となった。

報告書をしっかり全員で確認していれば、こんな問題はすぐ気づけたのでは、と思うと、経理関係のことを任せっきりだったことをめちゃくちゃ後悔した。経理を担当していたスタッフも責任を感じただろうけど、これは経営者3人の責任だと思っている。

このことが大きな失敗の第2波となって、ノビコは自転車操業状態に陥り、光熱費、税金、私たち3人の給料などは遅らせるしかなくなった。最近では毎月約2000€の赤字が出ていたので、このままじゃヤバイ、という事で、具体的な策を練っているのが、今のノビコの現状なのである。

情けないけど、私たちは経営において全くの素人だと思い知ったし、反省すべき点も多いが、起きてしまった事は仕方ない。これも勉強だと思うしかない。でも19%の消費税がノビコのような個人店にとっていかに大きな負担か実感したし、税金政策全体がいかに大手企業に有利にできていて、反対に個人事業主を苦しめているかを見るきっかけにもなった。日本の税金政策についても同じ問題があると思う。

飲食業界でいうと、ドイツは日本に比べると保守的だと感じるし、個性的なお店になかなか出会えないのは、そういうニーズが追いついてないからかな、と思っていた。それでも最近は、ありきたりなレストランよりこだわりの強いオルタナティブなお店への支持も高まってきているようだし、そういう流れを後押しするためには、税金政策そのものが個人事業主をサポートするものに変わるのも大事なポイントなんだろうと思う。

 


3、値上げは免れない!

私たちは「安くて美味しい」お店が好きだし、そういうお店をできるだけ目指してきた。最初に値段を決めた時は、単純に自分ならこれくらいの値段で食べたい、という感覚を大事にした。かつ他のお店の価格も参考にしつつ、日本料理を出すお店としてはかなりお手頃だと感じるように設定した。

食材もできるだけ、余計なものが入っていない安全なものを選んだ。野菜はほとんどオーガニックだし、化学調味料や保存料が使われている材料は、ほんの一部。何より自分たちでうどんもスープも手作りしているので、何が入っているかは自分たちが一番よくわかっている。だからこそ、美味しいものができると信じているし、自分たちも安心して食べれるもの、食べたいものを、お店で出したいという気持ちがある。

でもこの「安くて美味しい」をキープしながらお店を回す事は、前述の赤字問題を踏まえても、かなり難しくなった。やむを得ず、4月にメニューの大半を20centから1Euro値上げした。それでもまだお手頃な価格帯を維持していたし、それでお客さんが離れることもなかったけど、売り上げ的にそれほど良い影響もなかった。

問題は明白で、私たちはやたらと手間をかけてほとんど手作りしているので、それにかかる時間が高いのだ。そのことを踏まえた上で値段をシビアに考えてなかったのは、最初の失敗としてあったと思うが、どれほどの手間がかかり、それをどう計算すれば良いかもよくわかっていなかった。値段をつけるのって本当に難しくて、料理を作る手間暇を消費者に理解してもらったとしても、彼らの求めているものはやっぱりお手頃で美味しいものだったりするし、貧乏人にとっては一回の食事に10€以上出費するとか普通に痛い。それじゃあたまの贅沢としてしか、ノビコを利用できなくなるし、気軽に利用できる店を目指していた私たちとしては、なんだか残念な気持ちになる。だからといって、うどんを冷凍にして、野菜をオーガニックじゃなくして、みりんや醤油も保存料が入ってる安いものに変えて、昆布出汁をインスタントにして、、、なんて考えただけでもっと残念な気持ちになる。私たちの作る楽しさが奪われるような事は、しても意味がない、と思う。

結果、私たちは来年もう一度、値上げをすると決めた。赤字から抜け出す策の一つでもあるけど、どちらかと言うとこれからもノビコを続けていくために不可欠な事として考えている。それでも手が届く程度の値段を考えたいし、どのメニューをどれくらい上げるか、は策として超重要なところ。こんな手は何度も使いたくないので、ちゃんとした計算が必要になってくるし、今度こそ意味のある値上げにしたい。お客さんの反応は不安だけど、今のところ多くのお客さんがノビコの料理に満足してくれているし、何度も来てくれるリピーターも多い。きっと理解してくれると、お客さんを信じるしかない。そうしないといよいよ続けられなくなるのは目に見えているのだから。

そしてこの問題から見えてくるのは、安いものに飛びつく消費者意識が社会をどう変えてきたかって事。

そもそも食事を安く抑えたい、という気持ちは私にもあるけど、その考え方で消費してばかりいると、結局儲かるのは大手の食品会社だったり労働搾取が横行する輸入産業だったりするのである。多少高くても、地元の食産業を応援する気持ちとか、インスタントに頼らず手作りしているレストランに対するリスペクトを持って、消費した方が気分が良い。お金がなかったら100%そうもいかないけど、そういう意識をもつ事がまず大事、と思ったりする。もちろん値段だけで良いものがどうか判断できないので、売る側のスタンスやコンセプトを知るってことも大事。もし貧乏でどうしようもないって状況なら、自分で野菜を作ってみたり、ものを消費してすぐ捨てるではなく壊れたものを直しながら大事に使ったり、リメイクしたり、生活術を身につけてクリエイティブになれれば、その方が1円でも安い商品に飛びつくよりも豊かなんじゃないかと思う。

値上げしても消費がついてくるには、みんなの生活そのものが底上げされないといけないし、みんなの消費に対する意識も変わらないといけない。これもまた政治の問題、社会の問題と言えるのかな。みなさん、周りの好きなお店が値上げを決めても、努力が足りん!だなんて思わず優しく受け入れてあげよう!値上げは売る側としても、めちゃくちゃリスクがある。できる努力はすでにしているはずだし、ノビコもお店のコンセプトを崩さない程度には仕入れ先を見直したり、次の項目で書く人件費についても、考えないといけない状況にきている。

 


4、人件費のリアル

利益を上げるために一番てっとり早い方法は、客を増やすことでも値段を上げることでもなく、経費削減だと聞いたことがある。その中でも一番大きい削減となるのが、人件費だと思う。

ノビコの人件費は、最近の売り上げの70%〜80%を占めている。どれくらいの割合が健全なのかは知らないが、素人から見てもちょっと多いんじゃ?と思う割合だ。この赤字問題をなんとかしようと思ったとき、3人でまず考えたのは、開店時間を短くする、という案だった。平日はランチタイム、ティータイムをなくして、ノビコで一番収入の多い夕方から夜のみの営業にする。土日は元々14時オープンなので、現状維持。当然働けるシフトも減るので、人件費が抑えられるということだ。多くのスタッフは、それまで希望する労働時間以上に働いていたし、それを希望労働時間内に抑えればいけるかもしれない、と改めて計算してみたが、残念ながら希望労働時間が想定するシフト時間より多く、月100時間はオーバーしていた。そのためこの案はすぐには実現できないけど、来年にはなんとかできないか、考えている。それは人件費云々の理由だけではなく、私たち3人の自由な時間をもっと確保するためにも良い案だと思ったからだ。

この赤字問題は、この開店時間を短縮する案が出たときから、他のスタッフにも共有され、このままでは続けられない事を正直に伝えた。スタッフの中には学生だったり他の仕事があったりと、たまにしかシフトに入らない人もいた。彼らはこの状況を鑑みて、自らノビコを辞める事を決めた。心苦しいし情けないけど、引き止める事もできない。それでも100時間の削減には程遠いので、すぐにできる事はスタッフの残業を減らし、その穴埋めは経営者3人がカバーする事と、忙しい夜のシフトもギリギリの人数で回す事しかなかった。一人一人の負担も増えるし、これも長く続けられるとは思わない。お店は忙しいのでスタッフは必要。でもこの人数を雇い続けるのは無理。そういう状況から、みんなが納得のいく方向にお店を持ってくために、みんなで話し合い、なんとか良いバランスを見つけ出すには、まだまだ時間がかかりそうである。

人件費を減らすって、短期的に見たら一番効果あるけど、一番難しくて大変だと感じた。スタッフみんなの生活にも関わる事なのに、そういう選択しかできない状況にしてしまった事は、どこからどう見ても経営者3人の責任だし、本当に申し訳なく思う。

それでもスタッフのみんなは、腹をたてる事もなく一緒に悩んでくれて、むしろ私たちを励ましてくれた。やってみなきゃわかんない事もあるし仕方ない、いつかまたうまく回るようになるよ、と。本当にありがたい事だ。

多分だけど、ノビコの仕事でスタッフが普段理不尽な思いをしていたり、プレッシャーを過度に感じていたら、こんな窮地に陥ったとき、お店を助けたいという気持ちにはなってくれなかっただろう。ヒエラルキーをなるべく感じさせないとか、シフトもみんなで決めて希望を言いやすくする、とか雰囲気作りの面で気をつけてきたこともあるけど、根本の労働者としての権利を守ることも大事だと思う。
例えば、風邪をひいて仕事を休んでも、責任を感じなくていいし、給料がその分減ることもない。裏を返せばそれは、誰かが病気になれば、その代わりに入るスタッフと休んだスタッフの両方に人件費がかかるので、経営的には痛手だけど、この権利はドイツで割と当たり前にある。医者の証明書があれば、一日からでも給料の70%をカバーしてくれる保険もある。日本では、有休から引かれるのが当たり前だったので、最初知った時は驚いた。でも考えて見れば誰だって病気になりうるんだし、有休から引くなんて、こっちの人から見ればそれこそ理不尽に映るだろう。だって有休というのは休暇をとるためにあるのだから。

ノビコの場合、休暇は一年間で6週間。雇用体制に関わらず、全員に与えられている。これは42日分をバラバラに取得して良いという意味ではなく、1週間単位で取得するのが基本らしい。だから週3日で働いている人は、実質1年間で18日分が有給休暇、という計算。この考え方は、日本とは根本的に違っていて衝撃だった。大事なのは休暇をとること、仕事から離れ、身体を休ませリフレッシュすること。日本の企業で働いていた時の年に10日ほどの有休では到底無理だし、大体半分くらいは風邪やら遅刻やらサボりやらで消えていた。ドイツに来て私は初めて休暇を経験したと言ってもいい。

そしてこの休暇も人件費としてはデカい。多くの人が夏に休暇を取るので、働けるスタッフも少なければ、客足も減る。しかし人件費はいつもと変わらずそこにある。経営者にとっては本当に痛手ではあるけど、これも大事な権利。まあ自分も休暇はちゃんと取りたいし、痛手だと思わずにちゃんと想定した上で、価格やら仕事量やら働ける人数やらのバランスを考える必要がある。

しかしこれらを踏まえると、ドイツでの人件費は、日本よりも大きいことがわかると思う。ちなみに健康保険や年金は、雇用主と折半で払われるので、日本と同じくらいの感覚かな。ドイツでもこれらの権利が保障されていないブラックな会社もあるかもしれないけど、ノビコの労働条件も、特別良いわけでもなく普通のレベルだ。

時給は1時間10€。最低時給より少し高いくらいだけど、これも今後上がる可能性がある。日本でも最低時給を1500円に!という声があって、私は全面的に支持したいが、中小企業の苦しさもよく理解できる。最低時給を上げる、という政策は、ただそれだけでは成り立たず、政府のサポートがなければ中小企業の切り捨てになるだけなんじゃないだろうか。飲食業界はもともと最低時給で働かされることが多いし、逆にそうでないと店が成り立たない現状があるんだと思う。その上で時給を上げるとなると、もう値上げしかないんじゃない、と思うけどそれで消費がついてくるかどうか、という不安が後についてくる。

ああ、いろんな問題が繋がっていて、いろんな事がうまくいかない無限ループが本当に解消される日が来るんだろうか。もう、全部がダメになった時に備えて、みんな畑を耕しておいた方が良いんじゃないだろうか。(まあ、すでに耕してはいるけど。)なーんてネガティブなんだかポジティブなんだかよく分からない事を思ったりもするが、もちろんノビコを諦めるのは、まだまだ早い。大変な状況ではあるけど、やめた方が良いとは露ほども思わないし、なんとかなると信じている。それはやっぱり来てくれるお客さんがいるからだし、頑張ってるスタッフがいるから、まだまだノビコには希望があるな、と心から思うのだ。

 


5、これからのこと

さあさあ、こと細かに状況を説明したけども、問題はこれからのお店のあり方だ。

先日のスタッフミーティングでは、色んなアイデアが出た。他のコレクティブ(特に飲食店)に話を聞いて参考にする、コンサルタントを頼む、クラウドファンディングをする、投資を募る、などなど、開店時間を短くすることや値段をあげること以外でできることはないか、と。

その中で個人的に面白いと思ったのは、投資を募る、というアイデア。株式会社にするとかそういう話でなくて、個人から月々いくら、という定額で支援を受けるというシステムで、農業の現場ではよく使われていたりする。でも農業の場合は、もちろんその時に採れる野菜がもらえるんだけど、例え災害や天気の影響で作物が少なかったとしても、支援額は変わらないので、農家側は一定した予算を確保できる。この仕組みが飲食店で通じるかどうかはわからないし、どうお返しできるかとかどういうシステムを作れば良いかとか、悩むポイントはたくさんある。でもなんとなく、サポーターになってくれる人がいそうな気もしているのだ。

こういうことやるのは、甘えだろうか?でも消費者を中心に据え、安いものを安く売って安く働かせることも、現実に合わせて値段を上げまくって、金持ち相手に商売するのも、どっちもまっぴら御免なので、そういう助け合いの道が選択肢としてあっても良いんじゃない?と、思ったり。

他のコレクティブと話をしてみる、横のつながりを作るっていうのも、前からずっとやりたかったこと。今もすでにサパティスタコーヒーをハンブルクのコレクティブから仕入れたり、コーラの仕入先もコレクティブ経営の会社だったりするけど、もっと顔を合わせて交流できたら面白いんじゃないかと。それで何が得られるかわからないけど、私たちのお店の立ち位置とか、目指す形がもっと明確に見えてくるんじゃないかって気がしている。

そこで合わせて思うのは、ノビコが料理を楽しむだけのレストランではなく、今まで書いてきたような社会問題を具体的にシェアできるような場所になったら、もっと素敵だな、と。例えば、ローカルな野菜よりも輸送コストがかかるスペインなどからの輸入野菜の方が安い現実とか、一方でノビコの庭で紫蘇や春菊を育てる超ローカル感とか、海藻についてのアレコレとか、きのこを地下で育てて見たらどうだったとか、他のコレクティブとの交流であるとか、そんな日常的なことを発信するだけでも、何か考えるきっかけになるかもしれないし、ご飯を食べに来た以上に得るものがあるってお店選びにとっても大事なポイント。ここでイメージしてるのは、まさに新宿BERGの壁に貼ってある「ベルク通信」なんだけど、ドイツ語の壁といつ作るのか問題を考えると、たちまち動けなくなってしまう。でもいつかそんな事もできるお店になったらいいな。

こうやって、この文章を時間を見つけてちょこちょこ書いてる間にも、私たちの試行錯誤は続いていて。値上げに合わせた新メニューを考えることもその一つ。値段を上げるためだけにメニューを改定するのはネガティブにしか映らないので、ちょっと豪華な(高価な)うどんを新しく考えたり、今ある材料でできるサイドメニューを増やしたり、トッピングのシステムを検討したり、中身を充実させる作戦も進行中。仕事は増えることになるけど、「つくる」ことはやっぱり楽しいので、今はちょっと前より気持ちも明るい。

 

2年半くらい前のブログでノビコの前身であるノビコディナーのことを書いたときは、「ドイツでBERGがやりたい」と書いた。志として当時の理想として書いたのだけど、お店の形態や場所柄を考えても、BERGのような「安い!美味い!早い!」店、高回転で毎日平均1500人来店するような店とはほど遠いどころか不可能だし、「BERGがやりたい」なんてよく言えたものだ。ビジネス書としても読める「新宿駅最後の小さなお店ベルク」という本を読んでみても、職人と作り出す味へのこだわりや、ブレない方向性、サービスや仕事に対する細やかさとか、レベルが違いすぎてこりゃ敵わん!(当たり前)ってなったんだけど、最近読み直していて、あ、これ私も同じだ!と深くうなづいてしまった箇所があった。店長である井野さんにとってのベルクとは?の答えの一つとしてあった、こんな言葉。

「まず私は「自分探し」よりも「自分のいるべき場だ!」と思ったのです。なるべく会社みたいな組織に属さず、自分で何かがしたかった。と同時に自分一人ではできないことがしたかった。誰と?何を?どこで?それらがリアルに現れる地点が、いま思えば「場」だったのでしょう。そして、私にとっての「場」とは、そうです。ベルクという店だったのです。」


私のやりたいことも「自分探し」じゃなくて「場探し」で、自分の力とかセンスとか表現とかよりも、「場」を作ることに関わりたかった。いつからか、そうなっていた。

30年近く続くベルクは、井野さんにとってリアルに自分とつながる「場」となり、信じられる「場」になった。その軌跡、歴史は何にも代えがたい特別なものなんじゃないかな、と想像する。

ノビコを作ってまだ2年も経ってなくて、お店も自分もまだまだ悩みっぱなしで安定感なくて、でも信じたい気持ちがあって。自分にとってノビコがどんな「場」なのか、言葉にできるほどの歴史もないけど、今はとにかく続けたい、維持したい気持ちで踏ん張るしかないなって思う。

例えば5年、10年続いたら、その「場」で何を思うか、今から楽しみにしながら。

 

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2019年2月号

 2019年の幕開けは、デンマークのレム島で迎えました!

で、以下のような4コマ漫画を描いたんですが…

 

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最後のコマの天秤、思いっきり逆になっとるやんけ!

ロッコへの輸送費とモロッコの人件費の方が断然安いので、天秤では軽くなってないといけないのに、、、

お恥ずかしい話です。

 

デンマーク旅行ではまず、首都のコペンハーゲンに。

電車と船で行ったんだけど、乗り継いだ訳ではなく、電車が船に丸ごと乗り込むスタイルでびっくり!そんなのあり???

あり、にする人間の傲慢さってすごいな。こちらは電車が船に乗り込んだ状態。乗り込む所、外からも見たかった。

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コペンハーゲンの街並みは、宮殿のような建物が整然と並んでいて、重厚。でもその一方で文化施設や港の遊歩道は、すごくオープンな雰囲気でモダン。

さらに、モダンで重厚なオペラハウスもある!

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どこに行ってもお洒落で洗練されている印象だったんだけど、中心地の港を挟んで反対側のエリアに行くと、もっと雑然としていて、自由な建築も多くあり、面白かった。

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そう、そのエリアはクリスチャニアという、元軍用施設をヒッピーたちが占拠して作り上げた自治区だったのだ!その地区の中心地では、マリファナも普通に売られていて、レストランやカフェ、床屋、服屋などもあり、多くの観光客で賑わっている。警察の姿も見たけど、特に地区そのものが弾圧されている訳でもなく、なんかそういう場所ってことでうまく成り立っているみたい。こういうあやふやな感じ、文句を言えなくする存在感って、いいね!

なんだけど、空間作りのセンスはなんかイマイチ好きになれなかった。自由さはあるんだけど、政治性やオリジナリティをあまり感じない。夏の休暇で訪れた、スロベニアの首都リュブリャナで見た、アクティビストが作った自治区の方が、もっとカッコよかったな。

とは言え、こういう自治スペースが都会に存在しているってだけでも、街の懐の深さを感じるね。日本と違って。

そんなこんなで、コペンハーゲンの色んな側面を見て回り、ホットドックやスモーブロー(パンの上に色々載ってるオープンサンド(写真参照))も楽しんで、デンマーク西側、ドイツとの国境近くにあるレム島へと向かったのでした。

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 レム島は北海にある小さな島なんだけど、デンマーク本島とは道で繋がっているし、浅瀬が広がっているので、あまり島という感じもなく電車とバスを乗り継いで到着。

ここの名産である、4コマで描いた殻付き小エビ、自分でむいて、美味しくいただきました。

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でも実は小エビよりも感激したことがあった。私たちの貸し別荘のすぐ近くに海があって、ある日たくさん人が群がってなんか採ってるな〜と思ったら、、、

なんと牡蠣でした!!!

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私たちも早速、買い物帰りの軽装備などお構いなしに参戦。

みんなのようにバケツいっぱいってほどではないけど、初めての牡蠣狩りに成功しました〜〜!まじ楽園。

早速、オーブンで焼いて食べる。しかものび太は牡蠣嫌いなので、私一人占め。ほほほ。笑いが止まりませんでしたね〜。小ぶりだったけど、うんま〜い!

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その後も気が向いた時に海辺を散歩、牡蠣探す、食べるってな感じで最高でした。

自転車をレンタルして島を大体一周したり、半端なく広い浜辺をあてもなく歩いたり。

貸し別荘にはWi-Fiもないから、DVD鑑賞と麻雀と読書を楽しみ、あとは美味しいご飯と酒!

休暇とはこうあるべき!という理想の旅でした。

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そもそもドイツに来てから、「休暇」というものを初めて経験している。

夏は2週間のスロベニアクロアチア旅行、年末年始には10日間のデンマーク旅行。

ノビコで普段バリバリに働きながらも、これが実現できるなんて思ってもいなかった。

1年に1ヶ月程度の休暇が当たり前の権利として認められる社会だからこそ、出来る。

そしてそのために、お互いに協力しあえる仕事場を作れてよかった。

 

今年の休暇は、ノビコを休業する事なく取れるよう、みんなのスケジュールを調整中!

私たちは8月後半に、イタリアへ!う〜ん、楽しみ!

 

 

 

 

 

2019年1月号

お店をやってると、様々な事故が起きるものですね。

 

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『Kakiage』まさかの英語読みミックス!!わざとなんちゃうか?と思ったり。。

ドイツ語は基本的にはローマ字読みなので、大体自然に読める、はず。

でもいくつか違う読み方もあるので、小さな間違いも起きる。これがなんか可愛いのだ。例えば、

「Tempura Teishoku」天ぷら定食 

 「ei」はドイツ語で「アイ」と読むので、「テンプラタイショク」

「Okazu」おかず

 「z」は「ザ」行ではなく、「ツァ」行?になるので、「オカツゥ」

「Hoji-cha」ほうじ茶

 「j」は「ジャ」行?ではなく、「ヤ」行になるので、「ホイチャ」

 

ほとんどの人は番号で注文するけど、読んでみようとトライする姿を見ると、なんだか気持ちもほっこりします。

 

ホイチャ、 響きが可愛いすぎるので、間違えてほしくてたまりません。

 

 

2018年12月号

やっと12月までたどり着きました。

さりげない日常の偏見。

 

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この店、最近行ってないな。。。

このツンデレ対応のお姉さんももういなくなっちゃったし。

今は別のイタリアンレストランに通っていて、そこでもほぼ同じような流れを経て、今では注文前にビールとコーラが運ばれてくるようになりました。