ニコニコ通り

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2023年5月号

ドイツの脱原発は、福島第一原発の事故後、高まった反原発の世論を受けて決まった事だった。

事故当事国である日本で「なぜか」決められなかった事が、事故後たった4ヶ月でドイツでは決めることができるんだ。

羨ましいやら情けないやら、逆にこんなにも甚大な被害が出ても、反原発運動が盛り上がっても、政治に反映されなかった日本の残念すぎる状況を思い知ったのを覚えている。

 

そしてドイツは、福島の原発事故後、国内の原発の安全チェックを行なった上で、2011年中に8つの原子炉を停止。2022年までに段階的に脱原発を進めることを決定。

予定としていた2022年末は達成できなかった。なぜなら、ロシアのウクライナ侵攻に伴って、ロシアからの天然ガスや石油の輸入をストップしたことで、ドイツのエネルギー供給方法が大きく変わり、暖房が必要な冬の間、電力不足に陥る可能性があったから。

緊急時のために、残り3基の原発はフル稼働できる状態にしておいた、というわけだ。

昨今のエネルギー危機を受けて、また地球温暖化への対策として、CO2排出量の少ない原発はやっぱりあった方がいい、石炭火力よりはマシだろう、という世論が高まっていたこともあったのだと思う。

今の連立政権にはずっと反原発を公約としていた緑の党が入っているので、原発稼働停止を4ヶ月遅らせたことで、もちろん緑の党への批判も高まった。

でも緑の党も、板挟み状態の中で妥協案として、緊急時にはフル稼働しますよ、という案を呑んだわけで、脱原発政策を反故にしたわけではないのだから、まだ良かったと私は思う。もしメルケルのいたキリスト教民主同盟が政権を握っていたら、もっと延期されていた可能性は充分にある。2011年に脱原発を決定した時の政権はメルケル政権だったけど、彼らの「脱原発」は選挙に勝つための公約だったに過ぎないと、我が家の政治アナリスト、のび太氏は言う。 

 

 

まあそんなこんなで、2023年4月、残り3基の原発も完全に停止。一応、脱原発を完了した。

一応、と書いたのは、核廃棄物は未だ中間貯蔵施設にあり、最終処分場をどうするのかといった問題がまだあるし、ドイツの原発が稼働していなくても隣国で稼働しているならそのリスクからは逃れられないから。

でも、とにかく脱原発への一歩を更に進めたことは確かで、どこぞの国と比べれば随分マシだと言わざるを得ない。

そんな気持ちで描いた5月の4コマ漫画でした。

 

一応、一応ですよ。福島の原発事故後の日本も、原発への依存度を下げる、再生可能エネルギーを推進する、みたいなこと言ってましたよね。歯切れの悪い言い方ではあったけど、これが完全に建前であったことが証明されてしまいましたね。

岸田政権が掲げるエネルギー政策、ガッツリ原発回帰になってるやんけ!

建て替える?最大限活用?はぁ〜〜!?

事故後に盛り上がった反原発の声は、最近はあまり聞こえてこないように思う。活動を続けている人もいるだろうけど、次々とやってくる社会問題、改悪法案、生活を脅かす災害などなどに気を取られているうちに、こういう方針転換をちゃんと議論がされないまま通されてしまう。

日本の政治の一番弱いところ。市民運動が政治に影響力を持つことがあまりないから、声を上げても無駄、という雰囲気がずっと蔓延っているように思う。

ドイツでの脱原発も、良い政治家がたまたま居たからってわけでは全然ない。

原発市民運動が盛り上がって、これを無視したら選挙で負けるかも‥‥というプレッシャーを与え続けることができてこそ、なんだよな。

私は日本に居ないので、実際はどうだったんでしょう。

この方針転換があったとき、原発回帰へのリスクに対する議論はしっかりとあったんだろうか?

 

確かにEU全体でも原発を推進する動きは高まっている。エネルギー危機だけではなく、地球温暖化への対応策として、どちらかと言えば、石炭火力発電の方が問題なんだから、原発は温存した方が良い、と。

でも地球温暖化って、ただ気温が上がるのが問題なのではなく、それに伴う気候変動が問題なわけで、毎年のように今まではなかった異常気象に悩まされていますよね。

自然災害から大事故につながる原発を温存することが、未来の地球を守る事につながるとは、私には到底思えない。

フランスは言わずとしれた原発推進国だけど、去年の夏あまりの猛暑で川の水位が低下して、水力発電だけでなく、原発も冷却水が足りない為に運転ができなくなる状況まで追い込まれていた。

そのため、隣国ドイツから電気を供給してもらっていたくらいだし、原発がこんな身近な気候変動にさえ対応しきれない問題が浮き彫りになっていた。

さらに言えば、原発がCO2を発電時に排出しないとか言ったって、新設するため、設備を維持していくため、廃棄物を保管していくため、と原発を維持するためにCO2は排出されていると聞く。

その上、事故になった時の被害を考えると。。。

原発なんて、やっぱり持つべきじゃない。

再生可能エネルギーしか道はない!と何度も何度も思うし、

それで電力が足りない、というならば、生活そのものを見直して、

省エネを多方面で進めることをまずやらないと。

なぜなら、それが今の状況でも、個人でもできることの一つだから。

ドイツの行政としても、去年あたりから、夜通し点いてた看板や店舗の灯りを22時以降は消しましょうと呼びかけたり、できることはやっていると感じる。

たまに公園の街灯も全部消えていて、仕事から帰るとき暗さにびっくりすることがあるけど、それもその一つなんだろうか。まあ自転車だからいいんだけど、歩くなら真っ暗な公園は避けて通れば良いこと。

もう一つ、今の政権で決まったことの一つとして、新築で家を建てる場合、または暖房器具を新しくする場合、地球温暖化ガスを排出しない暖房器具を設置しないといけない、というのもある。今までよりコストがかかる為、反対する声も大きいけど、そんなに嫌がらなくてもいいのに、とも思う。

自分たちの消費の自由が奪われるのが嫌なんだと思うけど、それ位の制限をしないと変わっていかないんじゃないかな。

その方向が地球の未来のため、環境のためになるならば、受け入れてもいいんじゃないかな。

なんでも自由に消費して、なんでも自由に捨てて、それができるのが豊かさだと言うなら、そんな虚しいことってない。

もっと違うところに豊かさを求めるように、みんなの意識が変わっていけば、あるいは…。

些細な変化でも意味はあると思いたい。

…思いたいだけなのかな?

 

とにかく、みんなが興味を失えば、津波と、原発事故の犠牲を無にしてしまうかもしれない。

そんな悲しいことってないですよね。

教訓が何もなかったなんて。

絶対にそんなことになってほしくないので、小さくても声をあげ続ける必要があると思ってます。

原発、絶対反対!